冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
無邪気に蝶々を追う姿。母の隣で笑う横顔。
すべて、忘れるはずのない幼い日の私だった。
どの写真も少し遠くから、けれど、触れることの許されない宝物を慈しむような優しい角度で切り取られている。
「いったい、誰が……」
不意に、背後から長い影が落ちた。
「……それは、俺が撮ったものだ」
「っ!」
低い声が鼓膜を震わせ、肩が大きく跳ねた。
振り返ると、いつの間にか帰宅していた湊がそこに立っていた。
湊の表情は、覚悟を決めたような、どこか悲しげなものだった。
「湊……これ、どういう……」
言葉が、続かない。
湊が私の前にゆっくりとしゃがみ込み、深く息を吸い込んだ。
その表情には揺るぎない覚悟と、今にも壊れてしまいそうなほどの僅かな怯えが浮かんでいた。
真実を話すことで、私が離れていってしまうのではないかと恐れているような。
「ついに、話す時が来たようだな」
湊の瞳が、私を真っ直ぐに見つめる。
「……隠し続けるつもりはなかったんだ。いつか、ちゃんとお前に話そうと思っていた」
湊が私の手を、壊れ物を扱うような優しさで包み込む。
そして、湊はゆっくりと口を開いた。