冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「今から十五年前。俺の父は……高嶺邸で、庭師をしていた」
その言葉に、雷に打たれたような衝撃が走る。
――庭師。高嶺邸の。
「十三歳まで、俺はあの庭で育ったんだ」
湊の声が、僅かに震える。
「放課後、毎日、父の手伝いをしながら――」
湊が、アルバムに手を伸ばす。
「お前を、見ていた。……ずっと、お前だけを」
その言葉が、何年もの歳月の重みを伴って、私の胸に突き刺さる。
私が何も知らずに笑い、泣き、過ごしていた日々。
あの頃、湊も同じ庭に……いたの?
「私……」
声がかすれる。
「全然、覚えてない。あの庭に、湊がいたなんて……」
喉の奥が熱くなる。
あの頃、私の世界には、綺麗な花や蝶々、大好きな両親しか映っていなかった。
――そのすぐ傍らで、一途に私を見つめていた瞳があったなんて。
「っ、ごめんなさい……」
「謝らないでくれ」
湊が、親指でそっと私の涙を拭う。
「紗良が悪いわけじゃない」
「でも……」
「いいんだ」
湊が、私の頬に手を添える。
「お前は、お嬢様だった。俺は、庭師の息子だった。それは当然のことだ」
湊の瞳が、優しく私を見つめる。
「だけど、今は違う」
「今は?」
「今は、俺たちは対等だ」
湊が微笑む。
「俺はお前の夫で、お前は俺の妻だ」
その言葉に心が震える。
「そして……」
湊が、私を抱き寄せる。
「ようやく、紗良の隣に立てるようになった」