冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

***

私は、湊の話に耳を傾けていた。

「ある日、父が作業中に大怪我を負った。二度と庭師の仕事はできないほどの重傷だった」

湊の拳が、固く握られる。

「だが、当時すでに会社が傾いていたお父様は、父に満足な補償も出さず、それどころか『もう働けないなら』と俺たちを家から追い出したんだ」

私は息を呑む。そんな冷酷な仕打ちを、父が……?

信じがたい事実に、胸の動悸が激しくなる。

「……当時、中学生だった俺には何もできなかった。怪我で苦しむ父を連れて、途方に暮れて泣くことしかできなかったんだ」

湊が、私を見つめる。

「その時、俺は誓った。父や、いつかお前を守れるほどの力を手に入れてみせると。だから俺は、死に物狂いで勉強して、奨学金で大学へ行った。IT企業を立ち上げたのも、すべてはその誓いを果たすためだ」

「湊……」

「挫けそうになる夜は、何度もあった。けれど、そんな時はいつも、あの庭で本を読んでいたお前の横顔を思い出して、自分を奮い立たせてきたんだ」

湊が私の手を取る。大きな、けれど少しだけ震えている熱い掌。

「十五年間、お前だけを想ってきた。会社を作ったのも金を稼いだのも、すべてはお前のためだった。いつかお前の隣に立てるように。お前を守れるように」

「……どうして?」

溢れる涙を拭うことも忘れて、私は問いかけていた。

「父は、あなたたちにひどいことをしたのに。職を奪い、住む場所さえ奪って追い出したのに……。私たちを恨んでもおかしくないはずなのに、どうしてそんなに尽くしてくれるの?」
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