冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

「……違います!」

私は、湊の手を強く握りしめる。

「湊のせいじゃない。もしあの時、助けられていたら、私は湊の本当の優しさに気づけず、我儘なお嬢様のままだったかもしれない」

「だが……」

「湊は、私たちを助けようとしてくれた。誰も助けてくれなかった時、湊だけが動いてくれた。それだけで十分です」

私は、湊の頬を両手で挟む。

「もう、自分を責めないでください。お願いだから」

私は微笑む。

「これからは、二人で前を向いて歩きましょう。ね?」

湊が頷く。

「今まで私を想い続けていてくれて、ありがとう」

これで、すべてが繋がった。

湊の不器用な優しさも、時折見せる切なげな視線も。そのすべてが私への、十五年分の愛だったのだと。

「あの夜。バーで偶然、紗良を見つけた時」

湊が、私の髪を撫でる。

「運命だと思った。もう二度と、お前を手放したくないと。だから結婚を申し出た。卑怯なやり方だったかもしれない」

私は、首を横に振る。

「卑怯じゃありません。あの夜、暗闇の中にいた私を掬い上げてくれたのは、あなたです。……だから、感謝しているんです」

顔を上げて、湊を見つめる。

「私……幸せです」

「本当に?」

「はい。湊が長い間ずっと、私のことを忘れずにいてくれたなんて」

涙を拭いながら、私は口角を上げる。

「私も、あなたのことが――」

言葉が詰まる。視界が潤んで、目の前の湊が滲んで見える。

でも、その温かな手のひらの感触だけは、驚くほど確かだった。

胸の奥が、かつてないほどに熱い。

もう、隠す必要はない。この気持ちを、正直に伝えよう。
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