冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「顔を上げてくれ。桐生くん」
父に言われ、湊がゆっくりと顔を上げる。
「君は悪くない。むしろ、あの時……君は、我々を助けようとしてくれたんだろう?」
「お父様……」
父が微笑む。
「実は、当時の取引先の方から連絡をもらっていてね。君がどれほど奔走してくれたか、全部聞いたよ」
父が、湊の肩をぽんと叩いた。
「君は、高嶺家を壊した人間じゃない。崩れ落ちそうだった私と紗良の誇りを、最後まで守ろうとしてくれた恩人だ」
父は湊の目を真っ直ぐに見つめ、力強く頷いた。
「……っ」
湊の目から、堰を切ったように涙が溢れ出した。
ずっと自分を責め続けてきた彼の呪縛が、その一言で解けていくのがわかった。
「桐生くん……いや、湊くん。本当にありがとう」
「いえ。僕は、何も」
「いいや」
父が首を横に振る。
「君の気持ちが、何よりも嬉しかった」
父が、私たち二人を見つめる。
「初めて紗良が結婚すると聞いた時は、驚いたよ。同時に、心配でもあった」
父の表情が、少し曇る。