冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約



二人とも、しばらく動けなかった。荒い呼吸だけが、静かな部屋に響く。

やがて、彼がゆっくりと身体を起こし、バスルームから濡れたタオルを持って戻ってきた。

「大丈夫か?」

「……はい。平気です」

湊さんが、丁寧に私の身体を拭いてくれる。その手つきは、驚くほど優しかった。

「こっちへ来い」

隣に横になった彼が腕を広げてくれる。私は、その腕の中に身を委ねた。

「湊さん……ありがとうございます」

彼の腕に、力が込められる。

「……礼を言うのは、俺のほうだ。お前と出会えて……俺は幸せだ」

その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

素性も知らない。明日になったら忘れる約束。

それでも、今この瞬間だけは――愛されている。

この人の腕の中で、私は確かにそう感じることができた。

「紗良」

「はい?」

「今夜のことは、忘れられそうにない」

「……私も」

彼が、私の額にキスをしてくれる。

そして、強く抱きしめあったまま――私たちは眠りに落ちた。

窓の外では、東京の夜景が静かに輝いていた。十一月の冷たい夜に、二人だけの温もりを残して。
< 12 / 149 >

この作品をシェア

pagetop