冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
◇
二人とも、しばらく動けなかった。荒い呼吸だけが、静かな部屋に響く。
やがて、彼がゆっくりと身体を起こし、バスルームから濡れたタオルを持って戻ってきた。
「大丈夫か?」
「……はい。平気です」
湊さんが、丁寧に私の身体を拭いてくれる。その手つきは、驚くほど優しかった。
「こっちへ来い」
隣に横になった彼が腕を広げてくれる。私は、その腕の中に身を委ねた。
「湊さん……ありがとうございます」
彼の腕に、力が込められる。
「……礼を言うのは、俺のほうだ。お前と出会えて……俺は幸せだ」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
素性も知らない。明日になったら忘れる約束。
それでも、今この瞬間だけは――愛されている。
この人の腕の中で、私は確かにそう感じることができた。
「紗良」
「はい?」
「今夜のことは、忘れられそうにない」
「……私も」
彼が、私の額にキスをしてくれる。
そして、強く抱きしめあったまま――私たちは眠りに落ちた。
窓の外では、東京の夜景が静かに輝いていた。十一月の冷たい夜に、二人だけの温もりを残して。