冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

ドアを開けると、懐かしい匂いがした。

木の香り、畳の香り。母がいつも焚いていたお香の香り。

すべてが、そのままだ。

湊に案内されて、リビングに入ると……そこには、父の姿があった。

「嘘、お父さん!?」

「紗良」

父が、立ち上がって笑みを浮かべる。

「もしかして……退院したの?」

「ああ、昨日な。予定よりずっと早く退院の許可が出てね。湊くんが手配してくれた最高の医療環境のおかげで、持病もすっかり安定したんだよ」

「お父様と一緒に、今日という日を迎えたかったから。少し、強引に手配させてもらったんだ」

湊が照れくさそうに微笑む。

その一途で深い愛情に胸がいっぱいになり、私は父の胸に飛び込んだ。

「おお、おお」

父が、私の背中を撫でてくれる。

「大きくなったのに、まだ甘えん坊だな」

「だって、嬉しくて」

しばらく父の温もりを感じた後、私は顔を上げた。

「これ、全部湊が?」

「ああ。湊くんは、この家を買い戻すだけじゃなく、私のリハビリや退院まで手配してくれた。……だが紗良、それだけじゃないんだ」

父の声が震える。
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