冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「三年前、うちが倒産に追い込まれた時の負債も……実は、彼がすべて密かに肩代わりしてくれていた。取引先への支払いや従業員の退職金まで。その全てを、だ」
「え?」
初めて聞く話に、私は息を呑む。
隣に座る湊を見ると、困ったように目を伏せていた。
「どうして……教えてくれなかったんですか」
湊は一瞬ためらった後、私の手を大きな掌で包み込んだ。
「……お前に、負い目を感じさせたくなかった。過去の重荷はすべて俺が引き受けるから、お前には前だけを見て、笑っていてほしかったんだよ」
湊の声はどこまでも深く、慈しみに満ちていた。
父がおぼつかない足取りで立ち上がり、湊の前に立つ。
「湊くん。改めて、本当にありがとう」
父が、深々と頭を下げる。
「お父様、顔を上げてください」
湊が、慌てて父の背中に手を置く。
「君は、私たち家族の恩人だ。そして……本当に、いい婿をもらったよ」
湊が頬を染める。
「お父様、まだです」
「ん?」
「これから、彼女にプロポーズをしますので」
「おお、そうか。それじゃあ、しっかり見届けさせてもらおう」
父が、嬉しそうに目を細めた。