冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

私たちは、庭に出た。大きな桜の木の前に、三人で立つ。

冬の寒さが和らぎ、春の訪れを感じさせる柔らかな風が頬を撫でる。

桜の枝には、小さな蕾が膨らみ始めていた。

「紗良」

湊が、真剣な表情で私を見つめる。

とくとくと、鼓動が速まる。

「十五年前、この庭で初めてお前を見た。なんて素敵な子だろうって。あの日から、俺はずっとお前を想ってきた」

湊の声が、静かに響く。

「あの頃の俺は、ただの庭師の息子だった。お前が転んでも、助けに行くことすらできなかった。遠くから見つめることしか、許されなかった」

湊が、私の手を固く握る。

「心の中で、何度も呼んだ。『紗良お嬢様』って。でも、声には出せなかった。俺には、その資格がなかったから」

湊が、苦しげに笑う。

「だが、今は違う。俺は、対等な立場でお前の名を呼べる」

その言葉に、涙腺がゆるむ。

湊が、ポケットから小さな箱を取り出す。

「紗良」

湊が、目の前で片膝をついた。

春の陽射しが、湊の黒髪を照らしている。

「俺と、本当の夫婦になってくれないか」

箱を開けると、そこには指輪が入っていた。

プラチナのリングに、大きなダイヤモンドが輝いている。

「これは……」

「新しい指輪だ。前の指輪は、お前を縛るための契約の証だった。だが、これは違う」

湊が、私の目を真っ直ぐ見つめる。

「この指輪は、俺の人生のすべてをかけてお前を愛し抜くという、誓いの印だ」

湊の目から、一筋の涙が流れる。

「一生、お前を愛し続ける。お前を守り、幸せにする。だから……俺と、結婚してください」
< 125 / 149 >

この作品をシェア

pagetop