冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
胸がいっぱいで、もう言葉にならなかった。
溢れる涙で視界が滲む中、ただ必死に頷く。
「はい……はい……っ」
何度も、何度も。
湊が、指輪を私の薬指にはめてくれる。
それは、ぴったりと収まった。最初から、ここにあったみたいに。
「ありがとう」
湊が立ち上がって、私を抱きしめる。
パチパチパチ。
父が、拍手をする音が聞こえる。
「おめでとう、二人とも」
顔を上げると、父が目を潤ませながら笑みを浮かべていた。
「湊くん。紗良を、頼んだよ」
父が湊の肩を叩く。
「はい。一生、大切にします」
湊が深々と頭を下げる。
「この木は、紗良のお母さんと二人で植えたんだ。紗良が生まれた年に」
父が、桜の幹に手を当てる。
「『この子が幸せになれますように』って、二人で祈りながら」
父の声が震える。
「お前のお母さんは、もういないけれど……きっと、喜んでくれているよ」
私は、真っ青な空を見上げる。
「お母さん、ただいま。私、幸せだよ。……湊と一緒に、この家を守っていくから」
風が優しく吹き、桜の枝を揺らした。まるで母が「おかえり」と微笑んでくれた気がした。
湊が、私の肩をそっと抱きよせる。
「紗良のお母様。俺、紗良を一生幸せにします」