冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
二週間後の三月下旬。
梅の香が和らぎ、桜の蕾が今にも弾けそうな早春。私たちは、誓いの佳き日を迎えた。
場所は、小さなチャペル。招待客は、湊の会社の社員たち、そして私の父。
控室で、私は純白のウェディングドレスに身を包んでいた。
繊細なレースが施されたドレスを纏い、鏡を見つめる。そこには、かつての不安な面影などない、幸福に満ちた花嫁が映っていた。
私は、胸元にある母の形見のパールにそっと指先で触れた。
そのとき、ドアが静かにノックされた。
「紗良、入っていいか?」
父の声。
「はい」
父が部屋に入ってきた。
タキシードを凛々しく着こなした父が、私を見て目を細める。
「綺麗だ。紗良の母親の若い頃を見ているようだ」
「お父さん……」
「泣くな。せっかくの綺麗な化粧が台無しだぞ」
父は照れくさそうにはにかむと、そっと私の背中を叩いた。
「そろそろ、行こうか」
「はい」
差し出された父の腕に手を添え、私は一歩を踏み出した。