冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

チャペルの扉がゆっくり開くと、厳かなパイプオルガンの音色が天井高く吸い込まれていった。

ステンドグラスを透過した七色の光が、バージンロードを歩む私たちを導いている。

祭壇の前で私を待つ湊。私を捉えた瞬間、彼が息を呑むのが分かった。

「綺麗だ……紗良」

湊の唇が小さく動く。

父に腕を支えられながら、私はゆっくりと歩を進める。

一歩、また一歩。湊との距離が、少しずつ縮まっていく。

バージンロードを歩きながら、私は思い返していた。

半年前、絶望の中にいた私。

すべてを失って、生きる意味を見失っていた。

そんなとき、湊が現れた。

『それ以上は、体に毒だ』

あの夜、バーで。やけ酒をあおる私の手首を掴んで、引き止めてくれた。

『今夜だけ、お前の辛さを忘れさせてやる』

その言葉から、すべてが始まった。

祭壇の前に着くと、父から湊へと私の手が託される。

「湊くん。娘を、よろしく頼む」

「はい。必ず、僕の命に代えても幸せにします」

湊が深々と頭を下げた。父は満足げに頷くと、席に戻っていった。

湊の熱を帯びた手が、私の右手をしっかりと握りしめる。大きくて温かい、私の人生を救ってくれた手。

二人で、牧師さんの前に立つ。

「それでは、誓いの言葉を」

湊が私を見つめる。
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