冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

「湊」

「親父! よく来てくれた」

湊が、嬉しそうに男性を出迎える。

やっぱりこの方が、彼のお父さんなんだ。

「彼女が、妻の紗良だ」

湊のお父さんが私を見つめる。

「初めまして。高嶺……いえ、桐生紗良です」

私が差し出した手を取ったその掌は節くれ立ち、長年の庭仕事で固く厚かった。

湊のお父さんが優しく微笑む。

「ああ、知っているよ。あの庭で、いつも本を読んでいた可愛らしいお嬢様」

「え……」

「湊がずっと、お前さんのことを想っていたのも知っている」

湊のお父さんが、湊の肩を叩く。

「よくやったな、湊。お前は、自分の力で夢を叶えたんだな」

「親父……」

湊の目に、堪えきれなかった熱い涙が光った。

「紗良さん。不器用な息子ですが、よろしく頼みます」

湊のお父さんが、慈しむような眼差しで私を見つめ、丁寧に一礼した。

「いえ、こちらこそ……よろしくお願いします」

私も、溢れそうになる涙をこらえ、深く腰を折った。

少し離れた場所から、私の父がこちらを見ていた。

湊のお父さんと目が合うと、父は意を決したようにゆっくりと近づいてくる。

「桐生さん……お久しぶりです」

「高嶺さん」

二人の父親が、向かい合う。

かつて、雇い主と庭師だった二人。
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