冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
エレベーターに飛び乗り、ロビーを抜けて、外に出る。
十一月の朝は空気が冷たい。吐く息が白く見える。
ホテルの前には、本当にタクシーが待っていた。
あの人は、最後まで私を大切にしてくれた。
タクシーに乗り込み、アパートの住所を告げる。
窓の外を見ると、朝が始まろうとしていた。街路樹はほとんど葉を落とし、冬の気配が近づいている。
握りしめた名刺。
『MINATO Holdings CEO 桐生湊』
また、会えるだろうか。
◇
それから一週間。私は必死で日常に戻ろうとした。
コンビニの早朝シフト、派遣の事務仕事、父への見舞い。
忙しく動いていれば、考えずに済む。けれど、夜になると思い出す。
あの人の声、優しい手、何度も呼ばれた名前。
『紗良……』
その声が、耳に残って離れない。
◇
十一月下旬のある日。転職エージェントの担当者から、電話がかかってきた。
「高嶺さん、朗報です! 大手IT企業の最終面接が決まりました」
「本当ですか?」
心臓が跳ねる。
「ええ。企業名は『MINATO Holdings』。最近、急成長中の優良企業です」
その瞬間、息が止まった。