冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

エレベーターに飛び乗り、ロビーを抜けて、外に出る。

十一月の朝は空気が冷たい。吐く息が白く見える。

ホテルの前には、本当にタクシーが待っていた。

あの人は、最後まで私を大切にしてくれた。

タクシーに乗り込み、アパートの住所を告げる。

窓の外を見ると、朝が始まろうとしていた。街路樹はほとんど葉を落とし、冬の気配が近づいている。

握りしめた名刺。

『MINATO Holdings CEO 桐生湊』

また、会えるだろうか。



それから一週間。私は必死で日常に戻ろうとした。

コンビニの早朝シフト、派遣の事務仕事、父への見舞い。

忙しく動いていれば、考えずに済む。けれど、夜になると思い出す。

あの人の声、優しい手、何度も呼ばれた名前。

『紗良……』

その声が、耳に残って離れない。



十一月下旬のある日。転職エージェントの担当者から、電話がかかってきた。

「高嶺さん、朗報です! 大手IT企業の最終面接が決まりました」

「本当ですか?」

心臓が跳ねる。

「ええ。企業名は『MINATO Holdings』。最近、急成長中の優良企業です」

その瞬間、息が止まった。
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