冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
MINATO Holdings。あの人の……湊さんの会社。
「高嶺さん?」
「あ、はい……聞こえています」
「条件もとてもいいんです。正社員登用前提で、給与も前職の二倍近く。福利厚生も充実していて、社員の家族の医療費補助制度もあるそうです」
医療費補助制度――。
「それに、書類選考は既に通過しています。先方から、ぜひ高嶺さんに会いたいとのことで」
「え……でも、私、大学中退で、職歴も……」
「それでも、です。面接日は三日後、場所は本社ビルの最上階です」
頭が真っ白になった。
これは、偶然なのだろうか。それとも――湊さんが、何か?
いや、そんなはずはない。CEOが、一夜限りの女のために便宜を図るなんて。
父の治療費のこともあるし、やっぱり断れない。
それに――また、会えるかもしれない。
そんな期待が、胸の奥でささやいた。
「……お願いします。面接、受けさせてください」
「承知しました!」
電話を切ると、膝から力が抜けた。
どうしよう。本当に、また彼に会うことになってしまった。
心のどこかで願っていたはずなのに、いざその時が近づくと、恐ろしいほどの緊張が私を支配する。
だけど、あの時の約束は「忘れる」こと。
もし会ったとしても、知らないふりをするべきなのか。それとも――。
胸が高鳴る。不安と、期待と。
窓の外を見ると、例年よりかなり早く初雪がちらついていた。
冬が、もうすぐそこまで来ている。
そして、私の人生も大きく動き始めようとしていた。
バッグから、あの名刺を取り出す。
『MINATO Holdings CEO 桐生湊』
指でなぞると、あの夜の温もりが蘇ってくる。
「湊さん……」
小さく呟いた。
三日後、私はあの人に会う。
その時、彼は何と言うだろう。
そして、私は――どんな顔をすればいいんだろう。