冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

三日後。私は、MINATO Holdingsの本社ビルの前に立っていた。

地上四十階建ての、ガラス張りの巨大なビル。まるで天まで届くような、圧倒的な存在感。

私は、母の形見のネックレスを握りしめる。

お母さん、どうか力を貸して。

エントランスを抜けると、洗練されたロビーが広がっていた。高い天井、大理石の床、モダンなアート作品。

この会社を動かしているのが、あの人。彼の一言で、何億という金が動くのだろう。

改めて実感する。私とあの人は、住む世界が違う。

「高嶺紗良様ですね。こちらへどうぞ」

受付の女性に案内され、専用のエレベーターに乗る。

最上階のボタンが押された。

あの夜、ホテルのエレベーターで彼と二人きりになった時のことを思い出す。温かかった、彼の手。

心臓が、早鐘を打つ。

エレベーターが最上階に着いた。扉が開くと、そこは重厚な雰囲気の役員フロアだった。

「こちらの応接室でお待ちください。面接官が参ります」

案内された部屋に入る。

大きな窓からは、東京の街が見渡せる。あの夜、ホテルの部屋から見た景色を思い出す。

私は、ひとつ深呼吸をする。

大丈夫。普通の面接だ。もしかしたら、彼には会わないかもしれない。

CEOが一般社員の面接に出るはずがない。

――コンコン。

その時、ドアがノックされた。

「失礼します」

低い声。聞き覚えのある、あの声。

ドアが開く。

――その瞬間、あの夜と同じ、深い森を思わせる落ち着いた香りが鼻腔をくすぐった。

鼓動が、痛いほどに跳ねる。

入ってきたのは、漆黒のスーツを完璧に着こなした……桐生湊だった。

「え?」

なぜCEOが直々に? 偶然? それとも……。

私たちの視線が、交差する。
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