冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「石はピンクダイヤモンド。紗良の内に秘めた、優しさと強さを表すような」
その言葉に、息を呑む。
ピンクダイヤモンド――それは、とても希少で高価な宝石だと聞いたことがある。
「で、でも、そんな高いもの……」
「黙って受け取ればいい」
逆らうことを許さない、絶対的な響き。
湊が私の左手を手繰り寄せ、薬指をなぞる。
「お前は俺の妻になる。その証として、最高のものを贈る。これは、命令だ」
彼の目が、私を捉えて離さない。
私という存在だけを、その瞳に閉じ込めているような、そんな眼差し。
「……はい」
小さく頷くと、湊は満足げに目を細めた。
「デザインは桜をイメージしたい」
湊の指が、空中に小さな円を描く。
「中央のピンクダイヤを、白いダイヤで囲む。花びらが一輪の花を包むように。台座にも桜の枝を彫り込んで」
その仕草を見つめながら、私は思う。
この人は、どれだけ時間をかけて、このデザインを考えてくれたのだろう。
「お前の名前の『紗』は絹糸、『良』は美しいという意味だろう」
「はい……」
「繊細で美しく、そして強い。お前にぴったりだと思った」
胸が熱くなる。
この人は、私の名前の意味まで調べてくれたんだ。
契約結婚のために……いや、それとも――。
「完成まで、半月ほどお時間をいただきます」
店員が告げる。
「わかった。よろしく頼む」
湊は頷くと、私の左手を引き寄せた。
「楽しみに待っていろ、紗良。お前だけの、世界で一つだけの指輪だ」
その優しい声に、私は頷くしかなかった。