冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
父の言葉が途切れる。
「お父さん? 気をつけろって、どういうこと?」
「いや、何でもない。今のは忘れてくれ……お母さんも、きっと心配しているだろうな」
その言葉に、視界が滲んだ。
ごめんなさい、お父さん。本当のことが、言えなくて。
あなたを救うためなの。だから――。
私は母のネックレスを握りしめ、自分に言い聞かせる。
これでいいんだ。父の笑顔が戻るなら、私はどんな嘘でもつく。
◇
十二月十四日の朝。湊から連絡が来た。
【指輪が完成した。今日、一緒に取りに行こう。18時に駅で】
心臓が跳ねる。
ついに、完成したんだ。
急いで支度をして駅に向かうと、すでに湊が待っていた。
「来たか」
「はい、お待たせしてすみません」
私が近づくと、湊が私の手を取った。
「その顔、緊張してるのか?」
「……少し」
「大丈夫だ。お前に似合うものを選んだから」
その自信に満ちた言葉に、期待が膨らんでいく。
駅からしばらく歩いて、ジュエリー店に到着。
個室に案内されると、テーブルの上に小さな箱が置かれていた。
ネイビーのベルベットの箱。
白い手袋をした店員が、丁寧に箱を開けた瞬間――世界が止まった。