冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
淡い桜色の光が、静かに瞬いている。
「これが……ピンクダイヤモンド」
中央の石は、春の夕暮れを閉じ込めたような、儚くも確かな輝きを放っていた。
周りを囲む小さな白いダイヤモンドが、花びらのように、優しくピンクの石を包み込んでいる。
台座を見ると、細やかに彫り込まれた桜の枝。職人の技が、そこにあった。
「綺麗……」
言葉にならない。こんな美しいもの、見たことがない。
「桐生様が、何度もデザインを描き直されて。本当に、心を込めてお作りになりました」
店員が微笑む。
湊が、何度も?
私は、隣に座る湊に目をやる。
彼は指輪をじっと見つめている。その横顔に、満足とわずかな緊張が浮かんでいた。
「試してみろ」
湊が指輪を手に取る。その指先が、微かに震えているのが分かった。
まさか、彼が緊張しているのだろうか。
湊が私の左手を取った。彼の温もりが、そっと私の手を包み込む。
ゆっくりと、薬指に指輪を滑らせる。
冷たい金属の感触。それは瞬く間に私の体温を吸い込み、熱を帯びていく。
指輪が薬指の根元まで収まった瞬間、驚くほどの充足感が押し寄せた。
この指のために誂えられたのだと、肌が理解したかのような一体感。
「……完璧だ」
湊が満足げに頷く。
「お前にぴったりだ。まるで、最初からそこにあったみたいに」
私は、自分の左手を見つめる。
ピンクダイヤモンドが、柔らかく光を反射している。
桜色の光。私を包み込むような優しい光。
「……っ」
どうしてだろう、胸が苦しい。
これは、半年後には返さなければならない「借り物」の指輪なのに。
いつかは手元を離れるこの輝きを、もう愛おしいと感じてしまっている。