冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

「ありがとう……ございます」

視界が滲み、涙が一筋頬を伝った。

「泣くな」

湊が、私の涙を親指で拭う。その手つきは、驚くほど優しかった。

「これは始まりに過ぎない」

「始まり?」

「ああ。これから、お前はもっと幸せになる。俺が、必ずそうする」

その声に、また熱いものが込み上げてくる。

店員がそっと席を外し、個室には私と湊だけが残された。

「紗良」

名前を呼ばれて顔を上げると、湊が私の頬に手を添えた。

「綺麗だ。お前にこの指輪を贈れて、俺は幸せだ」

その言葉に、心臓が早鐘を打つ。

「忘れるな。形だけでも、お前は俺の妻だ。そして……」

湊の瞳が、私を捉えて離さない。

「この指輪は、お前が俺のものだという証だ」

その声には、独占欲が滲んでいた。

「……はい」

小さく頷くと、湊はひざまずくような仕草で、私の手の甲に熱い口づけを落とした。

その唇の感触が、肌に焼きついた。

まるで、誓いを立てているような――そんな厳かな瞬間だった。



店を出ると、外は完全に夜になっていた。

クリスマスまで、あと十日。街は、一年で最も華やかな季節を迎えている。

「今夜は、特別な日だ」

「特別?」

「ああ。お前が俺の妻になることを、形にした日だから」

湊が私の手を取る。指輪をはめたほうの左手を。

「食事に行こう。予約してある」

「え、今から?」

「問題あるか?」

有無を言わさぬ口調。でも、その目つきは優しい。

「いえ……」

湊に手を引かれ、私は歩き出した。
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