冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「ありがとう……ございます」
視界が滲み、涙が一筋頬を伝った。
「泣くな」
湊が、私の涙を親指で拭う。その手つきは、驚くほど優しかった。
「これは始まりに過ぎない」
「始まり?」
「ああ。これから、お前はもっと幸せになる。俺が、必ずそうする」
その声に、また熱いものが込み上げてくる。
店員がそっと席を外し、個室には私と湊だけが残された。
「紗良」
名前を呼ばれて顔を上げると、湊が私の頬に手を添えた。
「綺麗だ。お前にこの指輪を贈れて、俺は幸せだ」
その言葉に、心臓が早鐘を打つ。
「忘れるな。形だけでも、お前は俺の妻だ。そして……」
湊の瞳が、私を捉えて離さない。
「この指輪は、お前が俺のものだという証だ」
その声には、独占欲が滲んでいた。
「……はい」
小さく頷くと、湊はひざまずくような仕草で、私の手の甲に熱い口づけを落とした。
その唇の感触が、肌に焼きついた。
まるで、誓いを立てているような――そんな厳かな瞬間だった。
◇
店を出ると、外は完全に夜になっていた。
クリスマスまで、あと十日。街は、一年で最も華やかな季節を迎えている。
「今夜は、特別な日だ」
「特別?」
「ああ。お前が俺の妻になることを、形にした日だから」
湊が私の手を取る。指輪をはめたほうの左手を。
「食事に行こう。予約してある」
「え、今から?」
「問題あるか?」
有無を言わさぬ口調。でも、その目つきは優しい。
「いえ……」
湊に手を引かれ、私は歩き出した。