冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「あの夜、バーで話しただろう」
湊がさらりと言う。
「え? そうでしたっけ?」
あの夜のことは、お酒も入っていて記憶が曖昧だ。
「ああ。お前が嬉しそうに話していたから、覚えていた」
湊の声が、優しくなる。
「いちごだけじゃない。白ワイン、チョコレートケーキ、春の桜――お前が幸せそうに話したことは、すべて覚えている」
こんな些細なことを覚えていてくれる湊に、胸が温かくなった。
「だから、指輪も桜をイメージした。お前の幸せを、形にしたかった」
その言葉に、また視界が滲む。
「ありがとう……湊」
名前で呼ぶと、湊の表情が柔らかくなった。
「もっと呼んでくれ。何度でも」
その瞳には、満たされない何かがあった。
まるで、どれだけ私を見ても、触れても、足りないとでも言うように。
◇
レストランを出ると、外は冷たい風が吹いていた。
十二月の夜。もうすぐクリスマス。
「寒いか?」
湊が尋ねる。
「少し」
すると、湊が自分のマフラーを外し、私の首に巻いてくれた。
「え……」