冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

「俺は平気だ」

湊の体温が残るマフラー。ほんのり温かい。かすかに、湊の匂いがする。

深い森のような、落ち着いた香り。

あの夜、ホテルの部屋で感じたのと同じ香り。

「ありがとうございます」

「礼はいらない。お前を守るのは、俺の義務だからな」

湊が私の手を取る。

「送っていく」

車に乗り込むと、暖房が効いていて車内は温かい。

「紗良」

湊が、私の名前を呼ぶ。

「はい」

「来週、引っ越しの準備を始めてくれ」

「引っ越し……」

そうだ。私は、湊のマンションに住むことになる。

「年内に、お前を迎えたい」

「わかりました」

「必要最低限でいい。足りないものは、すべてこちらで揃えるから」

赤信号で車が止まり、湊が私を見つめた。

「これから、お前と一緒に暮らす」

その言葉に、胸が締め付けられる。

「楽しみだ。毎朝、お前の顔を見て目覚められる」

湊の声は、優しかった。

本当に、楽しみにしてくれているんだろうか。

それとも、ただの演技なんだろうか。

わからない。でも――少しだけ、楽しみにしている自分がいた。

車が動き出す。

左手の指輪が、街灯の光を受けて煌めいている。

半年後には、外さなければならない指輪。

でも、湊は言った。

『お前は、この指輪を外さないだろう。俺が、離さないからだ』

その言葉の意味を、考える。

本当に、離してくれないのだろうか。

それとも……。



アパートの前で、車が止まる。

「着いたぞ」

「ありがとうございました」

ドアを開けようとすると、湊が私の手首を優しく引き留めた。

「待て」

「え?」

湊が、シートから身を乗り出す。

ち、近い……!
< 41 / 149 >

この作品をシェア

pagetop