冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

「……この部屋は、好きに使ってくれてかまわない」

私の沈黙をどう受け取ったのか、湊が、少し視線を外して部屋を見回す。

「足りないものがあれば、言ってくれ。すぐに用意する」

「ありがとうございます」

私は、窓の外を見つめる。

ここが、私の新しい住まい。湊と暮らす場所。

実感がまだ湧かない。

外では、雪がちらつき始めていた。

白い小さな結晶が、窓ガラスに当たっては消えていく。

冬が、本格的に始まりつつある。そして、私の新しい人生も。



その日の夕方。私は、キッチンに立っていた。

段ボールの荷解きを終え、自分の物を並べてみたけれど、広々とした室内は依然としてがらんとしている。

このマンション、どれだけ広いんだろう。

湊の帰りを待ちながら、私は夕食の準備をする。

今夜の献立は、肉じゃが。シンプルだけれど、心を込めて作った。

ゆとりのある調理スペースは、設備も最新のものばかり。

IHコンロ、大きな冷蔵庫、食器洗い機。

すべてが揃っている。だけど、どこか使いづらい。

慣れていないから?

それとも、このキッチンがあまりにも無機質で完璧すぎて、私の作る家庭料理がこの場所に似合わない気がしてしまうからだろうか。

湊からは『今日は早く帰る』と連絡があった。

引っ越し初日だから、気を遣ってくれているのかもしれない。

午後七時半。玄関のドアが開く音がした。
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