冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
数分後、湊がスウェットとTシャツ姿で戻ってきた。
カジュアルな姿を見るのは初めてだ。リラックスした雰囲気だが、やはり隙がない。
「いただきます」
湊が箸を手に取り、肉じゃがを一口、口に運ぶ。
咀嚼する喉の動きを、私は祈るような心地で見つめた。
お口に合うといいけれど……。
簡単な料理だし、きっと湊は普段もっと美味しいものを食べているだろうから。
湊が、ふっと視線を落とした。そして――。
「……美味い」
絞り出すようなその声は、驚くほど穏やかだった。
「本当ですか?」
「ああ」
湊が、また一口食べる。その表情が、かすかに緩む。
「すごく美味い。こんなに温かい食事は、久しぶりだ」
その言葉に、胸が熱くなる。
二人で食卓を囲む静かな夜。ぎこちないけれど、悪くない時間。
むしろ、心地よかった。
「ごちそうさま」
湊が、箸を置いた。
「ありがとう、紗良。すごく美味かった」
その言葉に、胸が満たされる。
「これから、毎日お前の料理が食べられるんだな」
湊が、口元をゆるめる。
「楽しみだ。明日も頼む」
その笑顔を見て、私も微笑んだ。
ここが私の新しい家。湊と暮らす場所。
少しずつ、現実味が帯びてきた。