冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

『頑張れ』

そう言っているような気がした。

エレベーターの扉が閉まり、湊の姿が見えなくなる。

私は、一つ大きな深呼吸をした。

よし。私も、頑張ろう。気合を入れなおした、そのとき。

「高嶺さん?」

「!」

背後から声をかけられ振り返ると、ショートヘアの女性が立っていた。三十代くらいだろうか。

「広報部の本橋(もとはし)です。よろしくお願いします」

「こっ、こちらこそ。よろしくお願いします」

本橋さんに案内されて、私は広報部へ向かう。

オフィスは、明るくて開放的だった。

若い社員たちが、活気に溢れて働いている。

「高嶺さんは、こちらのデスクです」

案内されたデスクは、窓際。東京の街がよく見える。

「まずは、会社のことを覚えてください」

本橋さんが、資料を渡してくれる。

「わからないことがあったら、遠慮なく聞いてくださいね」

「ありがとうございます」

私は、資料に目を通し始める。

MINATO Holdingsの事業内容、企業理念、広報の役割。

すべてが新鮮で、興味深い。

午前中は、あっという間に過ぎた。

◇

お昼休み。私は社員食堂で、本橋さんや他の同僚たちと一緒に昼食を摂っていた。

「高嶺さん、前はどんな仕事を?」

「派遣で、色々な会社を転々としていました」

「そうなんだ。この会社に、中途で正社員で入れるなんてすごいよ」

もしかして、湊が配慮してくれたのかな?

「ありがとうございます。これから頑張ります」

みんな、気さくで親切だ。

これから、この会社でやっていけそうな気がする。

「あ、新人の高嶺さんだ」

そこに、営業部の中谷さんが通りかかった。

彼は二十代後半で、爽やかな笑顔が印象的な男性だ。
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