冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

『頑張れ』

そう言っているような気がした。

エレベーターの扉が閉まり、湊の姿が見えなくなる。

私は、一つ大きな深呼吸をした。

よし。私も、頑張ろう。気合を入れなおした、そのとき。

「高嶺さん?」

「!」

背後から声をかけられ振り返ると、ショートヘアの女性が立っていた。三十代くらいだろうか。

「広報部の本橋(もとはし)です。よろしくお願いします」

「こっ、こちらこそ。よろしくお願いします」

本橋さんに案内されて、私は広報部へ向かう。

オフィスは、明るくて開放的だった。

若い社員たちが、活気に溢れて働いている。

「高嶺さんは、こちらのデスクです」

案内されたデスクは、窓際。東京の街がよく見える。

「まずは、会社のことを覚えてください」

本橋さんが、資料を渡してくれる。

「わからないことがあったら、遠慮なく聞いてくださいね」

「ありがとうございます」

私は、資料に目を通し始める。

MINATO Holdingsの事業内容、企業理念、広報の役割。

すべてが新鮮で、興味深い。

午前中は、あっという間に過ぎた。



お昼休み。私は社員食堂で、本橋さんや他の同僚たちと一緒に昼食を摂っていた。

「高嶺さん、前はどんな仕事を?」

「派遣で、色々な会社を転々としていました」

「そうなんだ。この会社に、中途で正社員で入れるなんてすごいよ」

もしかして、湊が配慮してくれたのかな?

「ありがとうございます。これから頑張ります」

みんな、気さくで親切だ。

これから、この会社でやっていけそうな気がする。

「あ、新人の高嶺さんだ」

そこに、営業部の中谷さんが通りかかった。

彼は二十代後半で、爽やかな笑顔が印象的な男性だ。
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