冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
言いかけて、私は口をつぐんだ。
言いたい。「好き」だって。
でも――。この気持ちに名前をつけてしまったら、きっと後戻りできなくなる。
もし今、この想いを口にしてしまったら……半年後、私は耐えられるだろうか。
「私は、湊のことが……とても大切だって」
言葉を変えた。
湊が、私の手を強く掴んだ。
「紗良」
名前を呼ばれて顔を上げると、湊の瞳が私を見つめていた。
「俺も、お前が――」
湊が言葉を切る。
その瞳には、言いたくても言えない何かがあった。私と同じように、本当の想いを隠しているような。
「お前は、俺にとってかけがえのない存在だ」
その言葉に、胸が熱くなる。
かけがえのない存在。
「好き」でも「愛してる」でもない。
だけど、この言葉だけで今は十分だった。
「ありがとう……」
「礼を言うのは、俺のほうだ」
湊が、私の額にそっとキスをする。
「お前がいてくれて、俺は救われている」
その言葉の意味を、考える。
もしかして湊も、何か抱えているんだろうか。私が知らない、過去を。
窓の外には、冬のイルミネーションが星屑のように瞬いている。
湊と、心が徐々に近づいていく予感がする。
契約だけの関係が、もう終わりつつある。
言葉にするのは、まだ早い。
けれど。確かに、私の心は湊に向かって――止められない速さで、動き始めていた。