冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

言いかけて、私は口をつぐんだ。

言いたい。「好き」だって。

でも――。この気持ちに名前をつけてしまったら、きっと後戻りできなくなる。

もし今、この想いを口にしてしまったら……半年後、私は耐えられるだろうか。

「私は、湊のことが……とても大切だって」

言葉を変えた。

湊が、私の手を強く掴んだ。

「紗良」

名前を呼ばれて顔を上げると、湊の瞳が私を見つめていた。

「俺も、お前が――」

湊が言葉を切る。

その瞳には、言いたくても言えない何かがあった。私と同じように、本当の想いを隠しているような。

「お前は、俺にとってかけがえのない存在だ」

その言葉に、胸が熱くなる。

かけがえのない存在。

「好き」でも「愛してる」でもない。

だけど、この言葉だけで今は十分だった。

「ありがとう……」

「礼を言うのは、俺のほうだ」

湊が、私の額にそっとキスをする。

「お前がいてくれて、俺は救われている」

その言葉の意味を、考える。

もしかして湊も、何か抱えているんだろうか。私が知らない、過去を。

窓の外には、冬のイルミネーションが星屑のように瞬いている。

湊と、心が徐々に近づいていく予感がする。

契約だけの関係が、もう終わりつつある。

言葉にするのは、まだ早い。

けれど。確かに、私の心は湊に向かって――止められない速さで、動き始めていた。
< 68 / 149 >

この作品をシェア

pagetop