冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

密室での二人の時間は、外の慌ただしさが嘘のように静かだった。

保温ボトルを受け取ると、湊は蓋を開けて香りを楽しみ、一口、喉を鳴らして飲み込んだ。

「……っ」

硬く結ばれていた彼の口元が、一瞬で柔らかく解けていく。

「美味い。疲れが吹き飛ぶようだ」

湊が、慈しむようにボトルを見つめた。

「紗良が淹れてくれたコーヒー、最高のご褒美だな」

湊が、私の頭にそっと手を置く。

「ありがとう。おかげで、残りの仕事も頑張れそうだ」

その声は、いつもより優しかった。

「俺の好み、覚えていてくれたんだな」

「はい。湊も私がいちごが好きだって覚えてくれてたでしょう? だから、私も……覚えたんです」

「そうか」

湊が私を見つめる。

その瞳には、言葉にならない感謝の色がある。

「紗良」

名前を呼ばれて、顔を上げる。

「お前は、本当にいい妻だ」

その言葉に、心がじんわりと温かくなった。

「では、仕事に戻ります」

私が扉に向かおうとすると、湊が私の手首を掴んだ。

「待て」
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