冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
振り返る間もなく、力強い腕に腰を引き寄せられ、私は彼の胸の中に閉じ込められた。
強く。でも、優しく。
「……少しだけ、このままでいさせてくれ」
耳元で響く彼の声は熱く、酷くかすれていた。
「ありがとうな。本当に」
湊の腕に、力がこもる。
「こんな些細なことが、これほど胸に沁みるなんて……」
湊が私の髪に顔を埋めた。
「紗良。お前がいてくれて、俺は幸せだ」
私も、湊を抱きしめ返す。この人の温もりが愛おしい。
「私も……湊がいてくれて、幸せです」
私たちは、しばらく抱き合っていた。
◇
一月四日、日曜日。
年が明け、いよいよパーティーの日がやって来た。
私は鏡の前に立ち、深呼吸を繰り返していた。
あのネイビーのドレスに袖を通し、真珠のネックレスを首元で留める。
鏡に映る自分は、まるで別人のように見える。髪は美容室でアップにしてもらい、メイクもプロの手を借りた。
今夜は、取引先との社交パーティー。海外の投資家や実業家たちが集まる、年始の大規模なイベントだ。
そして、湊の妻として初めて公の場に姿を現す日。
「紗良、準備はいいか?」
ドアの向こうから、湊の声が聞こえる。
「はい、今行きます」
最後にもう一度鏡を見て、母の形見のネックレスに触れる。
お母さん、見守っていてください。
心の中で呟いて、私は部屋を出た。
リビングで待っていた湊が、私を見た瞬間――動きを止めた。