冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

振り返る間もなく、力強い腕に腰を引き寄せられ、私は彼の胸の中に閉じ込められた。

強く。でも、優しく。

「……少しだけ、このままでいさせてくれ」

耳元で響く彼の声は熱く、酷くかすれていた。

「ありがとうな。本当に」

湊の腕に、力がこもる。

「こんな些細なことが、これほど胸に沁みるなんて……」

湊が私の髪に顔を埋めた。

「紗良。お前がいてくれて、俺は幸せだ」

私も、湊を抱きしめ返す。この人の温もりが愛おしい。

「私も……湊がいてくれて、幸せです」

私たちは、しばらく抱き合っていた。



一月四日、日曜日。

年が明け、いよいよパーティーの日がやって来た。

私は鏡の前に立ち、深呼吸を繰り返していた。

あのネイビーのドレスに袖を通し、真珠のネックレスを首元で留める。

鏡に映る自分は、まるで別人のように見える。髪は美容室でアップにしてもらい、メイクもプロの手を借りた。

今夜は、取引先との社交パーティー。海外の投資家や実業家たちが集まる、年始の大規模なイベントだ。

そして、湊の妻として初めて公の場に姿を現す日。

「紗良、準備はいいか?」

ドアの向こうから、湊の声が聞こえる。

「はい、今行きます」

最後にもう一度鏡を見て、母の形見のネックレスに触れる。

お母さん、見守っていてください。

心の中で呟いて、私は部屋を出た。

リビングで待っていた湊が、私を見た瞬間――動きを止めた。
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