冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
黒いタキシードに身を包んだ彼は、映画の中から抜け出してきたような佇まいで、思わず息を呑む。
「……綺麗だ」
湊が、静かに私に近づいてくる。
「本当に、お前は美しい」
湊が私の手を取り、くるりと回す。まるで、ダンスの予行演習のように。
「完璧だ。今夜、間違いなく紗良が一番輝いている」
「そんな……湊のほうが、素敵です」
正直な感想を口にすると、湊が微笑んだ。
「行こうか。俺の自慢の妻を披露しに」
その言葉に、緊張と期待が入り混じった感情が胸に広がった。
◇
会場は、都内の高級ホテル最上階にある大宴会場だった。
エレベーターを降りた瞬間から、別世界が広がっている。
シャンデリアの煌めき、生演奏の優雅な音色。着飾った人々の華やかな笑い声。
私は、思わず足を止めた。
「大丈夫か?」
湊が、私の手をそっと握る。
「はい……少し、圧倒されて」
「俺がそばにいる。何も心配することはない」
その手の温もりに、少し落ち着きを取り戻す。
会場に入ると、すぐに何人もの視線が私たちに注がれた。
いや、正確には――私に注がれた。
好奇の目、値踏みするような目。そして、僅かな嫉妬の色。