冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
パーティーが進み、食事とシャンパンが振る舞われる。
私は湊の隣で、できるだけ笑顔を絶やさないように心がけた。
だが、慣れない環境と多くの視線に、少しずつ疲れを感じ始めていた。
「少し休むか?」
湊が、私の表情を読み取って囁く。
「いえ、大丈夫です」
「無理するな」
湊の手が、私の背中をそっと撫でる。その気遣いに、喉の奥が熱くなった。
「それじゃあ、お言葉に甘えて少し失礼します。喉が渇いてしまって……」
「ああ。もし、誰かが話しかけてきても相手にしなくていいから」
湊は私の手の甲に軽く唇を落とし、私を会場の端のラウンジへと促した。
ドリンクのおかわりを受け取り、私は少し離れた場所から湊の姿を眺める。
彼の周りには、すぐに人だかりができていた。
中でも、ひときわ華やかなドレスを纏った女性が、熱烈な視線を湊に送りながら、隙を突くように距離を詰めた。
「ご無沙汰しております、桐生様」
うわ、あの人すごく美人。没落した私と違って、どこか良いお家のご令嬢なのかな?
「今夜のダンス、ぜひ一曲お相手願えませんか?」
彼女がにこやかに、湊の腕に手を添えようとする。
やめて――!
喉元まで出かかった叫びを、私は必死で飲み込んだ。
あの人は、湊にふさわしい光り輝く世界の住人だ。それに比べて、契約で隣にいるだけの私は……。
胸を掻きむしるような嫉妬と、置いていかれるような予感に、心臓が痛いほど脈打つ。
……格好悪い。私に、あんな美人に嫉妬する権利なんてないのに。
それでも――やっぱり、あの人に彼を取られるのは嫌だ。そう思った、次の瞬間。