冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
ダンスを終えてテラスへ出ると、冬の夜風が火照った肌に心地よかった。
「疲れただろう」
湊がジャケットを脱ぎ、私の肩にかけてくれる。
その温もりと彼特有の香りに、安堵が広がった。
「少しだけ。でも、楽しかったです」
本音が、唇から漏れた。
最初は緊張していたけれど、湊と一緒だったから、どうにか切り抜けられたのだと思う。
「よく頑張った。さすが、俺の妻だ」
湊が、愛おしそうに私の頭を撫でる。
その穏やかな表情に、私が小さく微笑みを返した――その時。
「桐生さん。こんなところにいらしたんですね」
幸せな余韻を凍らせるような、艶のある低い声が響いた。
振り返ると、深紅のドレスを纏った美女が立っていた。
二十代後半くらいだろうか。夜の海のように冷ややかな瞳が、私を射抜く。