冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「鳳さん」
湊の声が、一気に固くなった。
警戒している。そう気づいた瞬間、私の背筋に緊張が走った。
「お久しぶりですわ、湊さん。お元気でしたか?」
女性が、馴れ馴れしく湊の名を呼ぶ。
湊さん、と。苗字ではなく、名前で。
「あら、こちらの方は?」
まるで、私の存在など今まで気づかなかったかのように。
だけど、絶対にわざとだ。この人は、最初から私に気づいていた。
「妻の紗良です」
湊が私の肩を抱き寄せる。その腕には、力が込められていた。
「まあ……あなたが、噂の湊さんの奥様」
女性の唇が弧を描く。
「初めまして。鳳華恋と申します」
差し出された華恋さんの手は、冬の夜のように冷たかった。
「桐生紗良です。よろしくお願いします」
華恋さんの目が、私の全身を舐めるように見る。
「あなたが湊さんの奥様だなんて、意外だわ」
その言葉に、微かな棘を感じる。
意外、という言葉の裏に隠された意味。
私は、釣り合わないと言いたいの?
彼女の瞳の奥に、明らかな敵意を見た。
「鳳さんは、湊の……」