冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「紗良……」
いつも鋼のように強靭な彼からは想像もできないほど、擦り切れた声。
「すぐ戻ります。待っていてください」
私は急いでキッチンへ向かった。
氷水で濡らしたタオルを絞り、解熱剤と体温計、水を持って寝室に戻る。
湊は、目を閉じて横たわっている。苦しそうな表情。
「湊、おでこ冷やしますね」
そっと額にタオルを乗せると、湊が小さく息を吐いた。
「冷たい……気持ちいい……」
「よかった。体温も測りましょう」
体温計を湊の脇に挟む。ピピッと音が鳴るまで、じっと待つ。
三十八度六分。やはり、かなりの高熱だ。
「薬、飲めますか?」
「ああ……」
私は湊の体を起こし、背中を支える。
解熱剤を手に取り、コップの水と一緒に差し出した。
湊が薬を飲み込むのを、じっと見守る。
「もう少し水、飲んでください」
「うん……」
湊が静かに水を飲む。その喉の動きさえ、弱々しい。
「よく飲めました」
私は、湊をそっと横にさせた。
枕の位置を直し、掛け布団をかけ直す。
「紗良、ありがとう……」
湊が、私の手を握る。その手は、熱を持っていた。
「当たり前じゃないですか。あなたは、私の……」