冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

「紗良……」

いつも鋼のように強靭な彼からは想像もできないほど、擦り切れた声。

「すぐ戻ります。待っていてください」

私は急いでキッチンへ向かった。

氷水で濡らしたタオルを絞り、解熱剤と体温計、水を持って寝室に戻る。

湊は、目を閉じて横たわっている。苦しそうな表情。

「湊、おでこ冷やしますね」

そっと額にタオルを乗せると、湊が小さく息を吐いた。

「冷たい……気持ちいい……」

「よかった。体温も測りましょう」

体温計を湊の脇に挟む。ピピッと音が鳴るまで、じっと待つ。

三十八度六分。やはり、かなりの高熱だ。

「薬、飲めますか?」

「ああ……」

私は湊の体を起こし、背中を支える。

解熱剤を手に取り、コップの水と一緒に差し出した。

湊が薬を飲み込むのを、じっと見守る。

「もう少し水、飲んでください」

「うん……」

湊が静かに水を飲む。その喉の動きさえ、弱々しい。

「よく飲めました」

私は、湊をそっと横にさせた。

枕の位置を直し、掛け布団をかけ直す。

「紗良、ありがとう……」

湊が、私の手を握る。その手は、熱を持っていた。

「当たり前じゃないですか。あなたは、私の……」
< 86 / 149 >

この作品をシェア

pagetop