冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
スプーンを口元に運ぶと、湊は耳まで赤くしながらも、観念したようにゆっくりと口を開けた。
ゆっくりと咀嚼する。
「……美味い」
湊の声が、少し力強くなった。
「本当ですか? よかった」
「……誰かにこんなことをされるのは、初めてだ」
その言葉に、胸がドキッとする。
私が初めて……。そう思うと、嬉しい。
一口ずつ食べさせるうちに、彼の顔色が少しずつ良くなっていくのがわかった。
「熱が下がってきたみたいですね」
「ああ。お前のおかげだ」
私は、卵をほぐして湊の口に運ぶ。
「もう少し食べてください。体力つけないと」
「うん」
湊が素直に従う。
こんな彼を見るのは、初めてだった。
いつも私を守ってくれる湊が、今は私に守られている。その事実が、不思議と嬉しい。
お粥を全部食べ終えると、湊が満足そうに息を吐いた。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
私は、お盆を置いて湊の額にそっと触れた。熱は、確実に下がっている。
「よかった……」
涙腺がゆるむ。
「泣くな、紗良」
湊が、私の頬に手を伸ばす。
「もう大丈夫だ」
「はい……」
私は、湊の手を両手で包む。
「本当に、心配しました」
「すまない。心配かけて」
湊が、私を見つめる。
「でも、お前がそばにいてくれて……嬉しかった」
その言葉に、心が温かくなる。
「当たり前です。ずっと、そばにいますから」
湊が口角を上げる。
その笑顔を見て、私もようやく安心できた。