隣にいる理由〜選ばれるはずのなかった私が、あなたの妻になるまで〜
 私は深々と頭を下げると、遼さんは「お互い様だから」と言ってコーヒーを口にする。
 私も目の前に置かれたコーヒーカップを手に取り、口元へ運んだ。

 コーヒーを飲み終えると、私は遼さんに車で自宅へ送ってもらう。
 遼さんの車の助手席に座ることはまだドキドキするけれど、最近ちょっとだけ慣れてきた。

 自宅まで送ってもらい、いつものように家事をする。
 夕食を済ませているから、掃除と洗濯がメインになるけれど、日中家にいないから外干しができないせいで洗濯物がなかなか乾かない。
 厚手の服は、仕方ないので近所のコインランドリーで乾燥機にかけることにした。

 洗濯物を持って、自宅を出る。
 コインランドリーへの道すがら、背後から人の視線を感じた。
 住宅街とはいえ車の往来もある場所だから、気のせいと言われたらそれまでだけど、何だか不躾な視線に感じて少し嫌な気持ちになる。

 何だろう、この感じ。私、道幅を邪魔しているわけでもないし。知り合いだったら声を掛けてくれるだろうけど、そんなふうでもない。一層のこと、こちらから振り返ってみるのがいいのかと思ったけれど、恐怖心が勝って足早にコインランドリーへ駆け込んだ。

 いつもなら、乾燥機の中に洗濯物を放り込み、待ち時間の間ウォーキングをするのだけど、今日はそんな気になれない。
 洗濯物が乾くまで、コインランドリーに設置されているベンチに腰を下ろし、スマホを見ているふりをして気持ちを落ち着かせていた。

 コインランドリーから帰る時は、特に何も思わなかったけれど、やはり夜の時間帯に出歩く時は細心の注意を払わなければならないと思った。
 無事に帰宅し、玄関も施錠をきちんと確認してようやく気持ちが落ち着いた。
 洗濯物を片付けると一気に疲れが押し寄せてくる。
 私は入浴を済ませると、この日は早めに就寝した。

 翌日は仕事が休みだったので、私は朝からのんびりと過ごしていた。
 日課のウオーキングは、職場近くの公園ではなく自宅周辺を歩いている。
 
 今夜は、遼さんも会食があると聞いていたので、ホテルに行く必要がない。
 今朝の朝食と昼食は昨日のうちに作っており、加熱したら食べられる状態にしてある。
 それに食事面の管理とはいえ、最近はきちんと私が作った料理を三食ちゃんと食べていると言っているし、睡眠も充分とれているとのことだ。一日くらい外食や市販のものを食べても問題ないだろう。
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