旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
第6章 揺らぐ想い

やはり、この任務は断るべきだった


 舞踏会から二日後の朝、レイモンドはエミリオと共に、とある港を訪れていた。首都から一日ほどの距離にある、国内最大級の交易港である。

 ことの発端は、二日前の王宮舞踏会に遡る。
 上官に呼び出されたレイモンドは、入港した帝国船に不審な積み荷があるとの報告を受け、その処理を命じられた。

 その際、偶然その場に居合わせたエミリオも「共に任務にあたらせてほしい」と願い出て、二人は揃って港へ赴くことになったのだ。


 ――そして今、問題の船は港に繋がれていた。

 該当の船は多くの兵士たちに囲まれ、甲板には開封された木箱が山のように積まれている。
 香辛料、織物、陶器――帳簿に記された品々は一見すると何の問題も見当たらないが、それはあくまで表面上に過ぎなかった。

「大尉、こちらをご覧ください。香辛料の袋の中に、もう一つ袋が入っておりまして――」

 部下に促され、レイモンドはエミリオと共に木箱の中を覗き込む。
 香辛料の袋の中には、さらに別の袋が仕込まれていた。

「二重袋か。……中身は――火薬だな」
「はい。他の箱にも似たような仕掛けがありまして」

 エミリオが織物の木箱を漁ると、布地の間から金属の光が覗いた。

「こっちは短銃の部品か」

 さらに陶器の木箱を調べると、二重底になっており、その隙間には弾丸がぎっしりと詰め込まれている。
 レイモンドの眉間に、深い皺が寄った。

「……これほどの量を、よく持ち込もうとしたものだ」

 この国では、武器の輸出入は軍が厳しく管理している。いかなる法人と言えど、許可なく武器を取り扱うことは許されない。
 ――にも関わらず、やはり金になるからか、こうして密輸しようとする者が後を絶たないのが実情だ。

 エミリオは手のひらで弾丸を転がし、口笛を鳴らした。

「これ、相当質がいいぞ。それにこの量。これだけあれば、一所領の私兵団を丸ごと武装させられる。領主が裏で抱え込めば、ちょっとした(いくさ)支度にもなりそうだ」
「感心している場合か。――船の責任者を連れてこい」

「はッ!」
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