旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
さっさと夫人のところに行け
朝靄の残る倉庫には、押収された火薬や銃部品が山と積まれ、兵士たちが慌ただしく出入りしていた。
徹夜明けのレイモンドは、帳簿と目録に目を走らせながら、作業の遅れに苛立ちを抑えきれず声を張り上げる。
「数量の照合に何時間かけるつもりだ! あと一時間で終わらせろ!」
怒声に兵士たちは肩を震わせ、慌てて動き出す。
――この二日間、レイモンドは密輸事件の後処理に追われていた。
初日は船の臨検から始まり、積み荷の押収と封印、押収品リストへの署名。それに、商人以外の関係者――船長や乗組員への初期尋問と調書の作成も。
実務の多くは部下たちに任せつつも、供述の整合性を突き合わせ、最終的な確認と承認はすべて大尉であるレイモンドの役目だった。
それに、帳簿に記された「アルマ商会」なる架空の名義について、情報部に調査を依頼する文書も作成しなければならない。
それらは非常に骨の折れる作業で、通常、二日や三日で終わるものではなかった。
それでも、レイモンドは手を止めるわけにはいかなかった。
今日の夕刻には、次の任地である軍港ヴェルセリアに、ソフィアが到着する予定だからだ。
(彼女を一人にするわけには……。いや、そもそも、彼女は俺の元に来てくれるだろうか……)
正午を過ぎ、執務机に戻ったレイモンドは、思い詰めた様子で報告書の清書に取りかかる。だが視線は文字を追いながらも、意識は別の場所に引き戻されていた。