旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
「アリス、やっぱり髪飾りを変えるわ。輿入れの際お母様にいただいた、白銀のものをお願い」
「え? ですが、これまでは旦那様にいただいたものをお付けになっていたのに」
「そのつもりだったけど、色味が鮮やかすぎる気がするの。それに、耳飾りは旦那様からいただいた真珠のものを付けるから、違和感はないと思うわ」
「……はい、わかりました」
アリスはしぶしぶと言った様子で、引き出しから別の髪飾りを取り出した。
白銀の細工に小さな真珠があしらわれたそれは、母が好む控えめな華やかさを備えている。レイモンドから贈られた真珠の耳飾りとも、よく合うだろう。
ソフィアは髪飾りを付け替え、耳に真珠の耳飾りをそっと留めた。
「お綺麗です、奥様」
「ありがとう、アリス」
――耳元に揺れる真珠を見つめながら、ソフィアはここ四日間のことを思い出す。
イシュが突然屋敷に現れた日から、ソフィアは離縁の準備に本格的に着手した。
荷物の整理や財産の移動、離縁に必要な書類の作成。それらの作業は、隠そうとしても隠せるものではない。
使用人たちは騙せても、レイモンドの目は誤魔化せないはずだ。
それでもレイモンドは何も言わず、引き留める素振りひとつ見せなかった。
相変わらず贈り物は届くが、あの日やんわり注意して以降、宝石や馬車一台分の紅茶セットといった過剰な高価品は消え、花束や香水、手袋や扇子といった控えめで趣味の良い品に変わっていた。