旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
離縁の準備には何も触れず、かと思えば、プレゼントは一日も欠かさない。自分に気持ちがないとわかっていながら、平気で甘い言葉を囁く。
その意図が読めず、胸の奥がざわめいた。
するとそんな気持ちを知ってか知らずか、レイモンドはソフィアの腕を自然に引き寄せ、自身の腕に絡ませる。
――エスコートだ。ソフィアはハッとした。
「行くぞ、ソフィア。そろそろ出ないと遅れる。まあ遅れたところで、俺たちに文句を言える者などいやしないがな」
「王家主催ですわよ? 流石に不敬じゃございませんこと?」
やんわりとたしなめると、レイモンドは愉快そうに笑った。
「どうだかな。試してみるか?」
「試すって……まさか、本当に遅れていくつもりですか?」
「そうだ。いっそ欠席でも構わない」
ソフィアはごくりと息をのむ。
(欠席ですって? 王家主催の舞踏会に?)
この男はいったい何を言い出すのか。冗談にしても度が過ぎている。
ソフィアは思わず本気で注意しそうになった。
けれど言いかけた瞬間、レイモンドの人差し指が、ソフィアの唇に触れる。
そうして、信じられないことを口にしたのだ。
「本当に欠席しても構わないんだぞ。ここのところ、ずっと浮かない顔をしていただろう。気が乗らないなら無理して参加する必要はない。それが例え、王家主催の舞踏会だろうとな」