旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
わたしは、平気よ
王宮の大広間は、まばゆい光に包まれていた。
天井から吊り下げられた巨大なシャンデリアが幾千ものクリスタルの粒を煌めかせ、光を四方八方に散らしている。
天井や柱には精巧な細工が施され、磨き上げられた大理石の床は、シャンデリアの光を映して淡く輝いていた。
その中を、色とりどりのドレスと燕尾服に身を包んだ貴族や高官たちが行き交い、笑い声とグラスの触れ合う音が絶え間なく響いている。
ソフィアはレイモンドの腕に軽く手を添え、ゆっくりと広間を進んでいた。
背筋を伸ばし、微笑みを絶やさぬよう心がけながらも、胸の奥は落ち着かない。
(旦那様は、どうしてあんなことを仰ったのかしら?)
ウィンダム家の屋敷にて――舞踏会に向かう支度を終えた直後、迎えに来たはずのレイモンドは言ったのだ。
「いっそ欠席でも構わない」と。
あまりに突拍子もない言葉に、ソフィアは返答を迷った。
けれど、どう答えるべきかと逡巡した次の瞬間――彼は何事もなかったような笑みを浮かべ、「冗談だ」と言葉を取り消したのだ。