旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜



 それから少し後、夜風が吹き抜ける王宮内の庭園――月明かりだけが照らす薄暗い小径(こみち)を、レイモンドは早足で進んでいた。

(暗いな。本当にここにソフィアがいるのか?)

 フェリクスから、ソフィアは庭園にいると聞いたものの、レイモンドはなかなかソフィアを見つけられずにいた。

 夜目が利くとはいえ、夜の庭園は薄暗い。それに、王宮の庭園は、はっきり言って広い。
 本当にこんなところにソフィアがいるのかと、不信感が募ってくる。

(そもそも、おかしくないか? フェリクスはソフィアをひとりで庭園に行かせたと? そんなことが有り得るのか? とはいえ、彼が嘘をつく理由はない)

 進めば進むほど、疑問が深まっていく。
 
 けれどそのとき、噴水の水音が聞こえ、そちらに目を向けた瞬間――。


「――は」

 視界に飛び込んできた光景に、レイモンドは足を止めた。

 噴水脇のベンチ。
 そこに、一組(ひとくみ)の男女がいた。

 薄暗くて顔までは見えないが、女性はベンチに横たわっており、男の膝に頭を乗せている。
 問題は、その女性の着ているドレスが、ソフィアのドレスとデザインが似ているということだった。

 いや、似ているどころの話ではない。
 あれはソフィアだ。顔は見えずとも、レイモンドには確信があった。

 男に膝枕されているのは、ソフィアに違いない、と。
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