旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
(これは、どういう状況だ?)
ソフィアは意識がないのか、身動き一つしない。
その様子に、ざぁっと頭に血が昇った。軍人として培ってきた冷静さが、一瞬にして吹き飛んだ。
胸の奥で、理性を焼き尽くすような熱が広がる。嫉妬と焦燥。抑えきれない独占欲が、一気に燃え上がる。
気付けばレイモンドは、二人の前に立っていた。
男がゆっくりと顔を上げ、視線が合う。
(この男は――)
その顔に、レイモンドは確かに見覚えがあった。執事に調べさせた、イシュ・ヴァーレン、その人だ。
「貴様、いったい誰の許可を得て、我が妻に触れている?」
低く問うと、イシュは恐れを知らぬ目でレイモンドを見据えた。
しばし睨み合った後、イシュはゆっくりと口を開く。
「無礼を承知で申し上げます。ウィンダム侯……どうか今すぐ、彼女と離縁していただけませんか」
「――何?」
「契約期間が残っていることは存じております。けれど、どうせ残りはひと月。多少早まったところで、何の問題もないでしょう?」