旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
(報告書によれば、あの男が妻を迎え入れたのはいづれもこの三年の間。にも関わらずソフィアまでをも求めるとは、あまりに強欲極まりない。ソフィアは、この事実を知っているのか?)
腕の中で、静かな寝息を立てているソフィア。その無防備な姿に、レイモンドの心臓はぎゅっと締め付けられる。
(どうして君は、あの男と二人きりでいた? いったい何を話していた? これほど無防備な姿を晒せるほど、あの男に心を許しているのか?)
思い返せば、舞踏会に出掛ける前から胸騒ぎはあった。
イシュが今夜の舞踏会に参加するとの情報を得たときから、嫌な予感はしていた。そのせいで、「欠席しても構わない」とソフィアに口走ってしまったほどだ。
それはソフィアの体調を気遣いつつも、彼女を信じきれない不安から出た言葉だった。
契約期間の満了を待たずして、ソフィアが自分の元を去ってしまうのではという不安。
(――だが、まさか本当にこんなことになるとは……)
今すぐ彼女を揺り起こし、問いただしてしまいたい。
あの男といったい何をしていたのかと。少なくとも今はまだ、俺の妻であるはずだ。それなのに――と。
だがそれと同じくらい、いや、それ以上に、真実を知る恐ろしさに苛まれている。
何も見なかったことにしてしまいたい。聞かなかったふりをして、何事もなかったかのように明日を迎えられればと――相反する気持ちがせめぎ合い、葛藤が渦を巻く。
(俺は君に、社交は最低限でいいと伝えた。それでも積極的に参加していたのは、イシュの商売を助けるためだったのか? 俺の知らぬところで、あいつのために動いていたのか?)
裏切られたような感覚が、胸を締めつける。