旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜

昨夜のことを謝らないと


 朝の光がカーテン越しに柔らかく差し込む。
 ソフィアはゆっくりと瞼を開け、見慣れたベッドの天蓋をぼんやりと見上げた。

「……朝?」

 無意識に呟いた次の瞬間、カッと大きく瞼を開く。

「えっ!? 嘘でしょう!?」

 ソフィアは飛び起きた。
 カーテンの向こうはすっかり明るい。間違いなく朝だ。もしかしたら昼の可能性もあるが、問題は、舞踏会がとっくに終わってしまっているという事実である。

「待って……。わたし、いつの間に戻って来たの?」

 昨夜の記憶が途切れている。
 回廊で兄フェリクスと遭遇し、恐怖に駆られて逃げ出したこと。その後、イシュの前で泣き崩れてしまったこと。
 そこまでは覚えている。けれど――。

「何も、思い出せないわ……」

 イシュは? 舞踏会は? レイモンドは……いったいどうなったのだろう?
 ソフィアが顔を青ざめていると、ノックの音がして、侍女のアリスが部屋に入ってきた。

「奥様! よかった、お目覚めになられたんですね!」
「……アリス」

 ぱっと明るい笑顔を見せて、アリスはソフィアの元に駆け寄る。
 いつもと変わらぬ彼女の様子に、ソフィアは安堵の息を吐いた。アリスの様子からして、どうやら事態はそれほど深刻ではなさそうだ。

「昨夜は本当にびっくりしたんですよ! 旦那様に抱きかかえられて帰ってこられて……ご病気なのかと思って、本気で心配したんですから!」
「ごめんなさい、アリス。……ところで、本当に旦那様がわたしを?」
「ええ、それはもう大切そうに! すぐにお医者様も呼ばれて、異常なしとの診断にとても安堵されていました!」
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