旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
アリスは手際よくカーテンを開けながら、身振り手振りを交えて昨夜のレイモンドの様子を生き生きと語る。
「旦那様は『余程疲れていたのだろう。しばらく休ませてやってくれ』とおっしゃって、私に奥様のお世話を命じてお部屋にお戻りになったんですけど、そのときの奥様を見る目ったら、もう……!」
アリスはそこで言葉を切ると、ベッドの上のソフィアにずいっと顔を寄せた。
「それで、奥様! 昨夜いったい何があったんですか!? もしや、舞踏会で何か進展が!?」
「え、ええと……、それは……」
ソフィアは気まずさに瞼を伏せる。
進展――そんなものあるはずがない。記憶は定かではないが、おそらく、自分はイシュの腕の中で眠ってしまったのだ。その後のことはわからないが、舞踏会を途中退席することになったのは間違いない。
つまり、自分はレイモンドに多大な迷惑をかけてしまったということだ。
それだけではない。
「実はね、昨夜、王宮でイシュに会ったのよ」
「え? イシュ様にですか?」
突然ソフィアの口から出たイシュの名前に、さすがのアリスも目を丸くする。
「そうなの。それで、色々あってイシュと庭園で話していたら……その、お酒が入っていたせいか眠ってしまって……その後のことを何も覚えていないの」
眠ってしまった理由が「お酒」というのは嘘だった。本当は、兄フェリクスと遭遇してしまったストレスから眠ってしまったのだが、言えばアリスを心配させてしまう。
それを危惧したソフィアは、咄嗟に苦しい嘘をついた。