私、王子様に独占されたい。
第五話 小さな一歩も大きな一歩 蓮side
朝の教室、教室の空気はざわざわしているけれど、俺は日和の方にそっと目を向ける。

昨日の自己紹介のとき、彼女が少し赤くなったことがずっと頭から離れない。
あのときは短い会話だったけど、胸が少しだけ苦しくなるくらい、意識してしまった。

(よし……今日も少しだけ話しかけてみよう)

日和はノートに向かって何かを書いている。
俺が近づくと、彼女は慌てて顔を上げる。

「おはよう、清水さん」

びくっと体を強張らせる。
「え……おはよう……ございます、月岡君」

ああ、やっぱり「月岡君」か。
その呼び方を聞くと、「蓮」って呼んでほしいなってちょっと思っちゃう。

「昨日は……自己紹介のとき、ちょっと緊張させちゃったかな」
俺は少し笑いながら言う。

日和は視線を机に落とす。
「そ、そんなこと……」
少し頬を赤くしている。

「でも、俺も昨日は少し緊張してたんだ。話すの苦手じゃないけど、自己紹介ってやっぱり緊張するから」
肩をすくめながら、自然に笑う。

日和は驚いた顔をして、ぽつりと言う。
「えっ……月岡君も……?」

「うん。意外に思うかもしれないけど、誰とでもすぐに話せるわけじゃないんだ」

そのあと俺は、軽く話題を変えてみた。
「そういえば、清水さんって授業中とかノートに何書いてるの? 昨日の自己紹介のこととか気になったんだけど」

日和は少し戸惑いながらも答える。
「えっと……日記みたいなこととか、授業のメモとか……」

「へぇ、面白そうだな。書くときに何か決まりとかあるの?」
俺は少し興味を持って尋ねる。

「うーん……特に決めてないけど、思ったことをそのまま書くことが多いかな……」

「なるほど。そういうところも、清水さんらしいんだね」
思わず微笑む俺に、日和は小さく笑う。
その笑顔だけで、胸がぎゅっとなる。

(なんで……ただ話してるだけで、こんなにドキドキするんだろう)

「じゃあ……今度よかったら、書いてること、少し教えてくれない? 興味あるし」
俺は少し真剣な目で提案する。

日和は迷ったあと、頷く。
「う、うん……いいよ……」
小さい声だけど、自然な笑顔も見せる。

俺は心の中でほっと息をついた。
昨日よりも少しだけ距離を縮められた気がする。
まだ小さな一歩だけど、二人の時間は確かに動き始めた。

窓から差し込む光が、二人の机の間に柔らかく差し込む。
この一歩が、いずれ大きな一歩だったって、思えるといいな…
木漏れ日の中で、そう感じていた。
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