麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
自分が思っている以上に、家族との出来事は彼女の心を傷つけ、攫われた現状と相まって、孤独としてのしかかっているようだ。
モモネリアは栄養が足りず、回らない頭を動かして考える。
何か...食べたいと思えるもの。
そういえば...と、ふとおぼろげに覚えている昔の記憶が蘇った。
◇
その日は、雨だった。
幼いモモネリアは、新しい長靴を履いてお気に入りの傘を持って買い物に行きたいとおねだりした。
そして、顔はわからないが....知らない女性と手を繋ぎ、八百屋まで買い物に行った。
薄ピンクの丸くて柔らかい、とてもいい香りのする果物を買い、家ですぐに切って食べた気がする。
口に入れるとジュワっと果汁が溢れて喉も潤った。
女性は、美味しそうに果物を頬張る私の顔を、ニコニコと眺め満足げに頷く。
温かい手で頭を撫でられ....女性の口が何か言葉を刻んでいる。
しかし、何を言っているかまでは思い出せない...。
何故か、そんな記憶が頭をよぎり、胸が疼く。