麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
....あの果物が食べたい。
モモネリアは、リードネストが攫ってきたと告げた日から一言も話していなかったが、そこで初めて重い口を開いた。
「....昔、食べたことのある果物が食べたいです。なぜか覚えている記憶で....。でも、なんの果物かわからないんです」
「っっっ!いい!どんなものでも用意する!その思い出を話してくれないか?」
身を乗り出して聞いてくる、リードネストの勢いに押されながら、モモネリアはその思い出を彼に話した。
静かに聞いていた彼は、話を聞き終えると、何やら顎に手を当てて思案顔になった。
そして、顔を上げたかと思うと、「わかった!」とすごい勢いで立ち上がる。
何事かと驚くモモネリアに、「ちょっと待っていてくれ!すぐに戻る!」と告げて、部屋を猛スピードで出て行ってしまった。
モモネリアは、呆気にとられながら、首を傾げた。
あの思い出は、詳しくはわからないが、幼い頃の記憶だろう。
そして、そこにでてくる女性はおそらく....本当の母なのかもしれない。
なんでもない記憶だが、思い出す度に心があたたまる気持ちがするからだ。
....もし、あの人が本当の母なら....どんな顔をしていたのかしら。思い出せないのが、残念だわ....。
モモネリアは、また窓の方に視線を向け、じっと眺めるのだった。