麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜




 バン!!!



 モモネリアは大きな音にビクッと肩が跳ねて、音のした方を見遣る。

 そこには、息を切らしたリードネストが立っていた。

 全身傷だらけで、頬や左腕の傷は大きく、血が流れ出している。




「っっ!!リードさん!?....どうして...っ?」




 思わず声を上げるが、そんなことより、というようにリードネストはズカズカとベッドサイドまで歩み寄り、おもむろに手の中の袋から、それを取り出す。




「......これ、は....あのときの、くだも、の?」




 差し出されたものは、まさに、あの古い記憶で何度も思い出していた果物で、その芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。



 ....そう。これ、だわ。この香り、この形、この色。



 モモネリアは、無意識に震える手をゆっくり上げ、リードネストから差し出されている果物を受け取った。

 そして、鼻の近くまで持っていき、スーッと香りを吸い込んだ。

 その瞬間、鮮やかに瞼の裏に当時の思い出が蘇った。


 断片的に、ではなく、あのときの街の風景、ガヤガヤ騒がしい周りの音、そして、母の温かな体温と自分に向けられた幸せそうな笑顔、記憶にある全て。

 そうだ、母はあんな顔をして笑うんだった。

 大好きな母、短い間でもたくさん愛を教えてくれた母、抱きしめて「愛してるわ」とキスしてくれた母。


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