麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「......もう、本当にリードは私に甘すぎる....と思う」
「当たり前だ。モモネリアを甘やかすのは、俺の特権だ。誰にも譲らん」
至極当然のように、リードネストはそう言った。
獣人は、番という存在にどこまで尽くし、どれだけの愛を捧げるのだろう。
その愛情がとてつもなく深く.....深く感じ、底が見えず困惑する。けれども、確かにその深い底なし沼のような愛情に喜びを感じている自分がいるのだ。
リードネストは、モモネリアがお願いすれば何でも聞き入れるきらいがあるし、モモネリア自身、リードネストにかなり甘え始めている自覚があった。
しかし、一方ばかりが頼り甘える関係は、いつか歪みがでたり、一方だけが苦しくなるのではないだろうか。
リードネストはモモネリアに頼ってこないし、ただ純粋にモモネリアに愛情を注ぐに徹して、絶対にリードネストと同等の気持ちをモモネリアに強要したりしない。
まだ、リードネストとの関係に迷っているモモネリアにとっては有り難いが、リードネストはそれでいいのだろうか、と心配になる。
リードネストにとってモモネリアは番で、本能的に愛する唯一の存在だ。
だからこそ、リードネストもモモネリアに愛されたいと思う気持ちがあるはずだ。
一般的な恋愛関係でも、やはり好きな相手には好きになってもらいたいし、愛されたいと願う。
番ともなれば、相当だろう。
なのに、リードネストはモモネリアの気持ちを優先し、モモネリアが甘えたい時には甘えさせて、モモネリア自身が望まないことは重荷にならないよう我慢している気がする。
....私は、彼に何ができるだろう。
最近、モモネリアはそんなことを思う。
リードネストは、「引け目なんて感じることない」「素直に甘えてほしい」とつつみこんでくれる。
でも、これは引け目でもなんでもなく。
ただいつも愛してくれるリードネストにモモネリアも何かしてあげたい、と感じるようになったのだ。
......こんな気持ちは、初めてだわ。
モモネリアは、両親と姉に尽くしてきた。
けれど、それは両親と姉に家族として愛されたいと潜在的に願うが故に、尽くすことで愛を乞うていたに過ぎない。
これだけ尽くしたのだからいつか愛してくれるはずだ、と。
だが、リードネストに対するこの気持ちは、それとは違う。見返りを求める気持ちではなく、ただリードネストに喜んでほしい。リードネストの力になりたい。支えたい。
そんな純粋な思いだった。
モモネリアは、彼に何かしてあげたい気持ちが抑えられなくなっていた。
そして考え、行動した。
モモネリアを甘やかすときの蕩けるような笑顔とは違う、リードネストの驚きや歓喜に溢れた表情を想像して、頬を緩ませながらーー。