麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
リードネストは、目を瞠った。
そして、膝を折って目線をモモネリアのものと合わせるとモモネリアの綺麗な瞳を見据えて、逸らさずに言い切る。
「...好きだ。愛している、モモネリア。お前が何よりも大切で、お前のためなら俺は何でもする。お前が望むなら、いくらでもこの実を探してくる。だから...食べろ。モモネリア。お前が弱っていくのは耐えられない。食べて、生きてくれ」
しばらくものを受け付けていなかった小さな口が、ゆるゆると開かれる。
一口齧ると、ジュワっと果汁が溢れて、口の端から垂れた。
モモネリアは、気にせず、瞼を閉じて噛み締め味わう。
ゴクリと呑み下すと、心を爽やかな風がスーと吹き抜けた気がした。
先ほどまで塞ぎ込んでいた気持ちが、前を向いた気がする。
口の端から流れた果汁を、リードネストが指で拭って自分の口に持っていき、ペロリと舐める。
「...甘いな」
ニッと笑う顔に、ドキンと心臓が跳ねる。
リードネストは、枕元の椅子を引き寄せそこに腰掛ける。
視線で、もっと食べろ、と促す。
促されるまま、それをまた口に運んで味わうと、自然な笑みが溢れた。
それを見て、リードネストが満足げに頷く。
まるであの時、果物を頬張る私をニコニコと眺めていた母のように。