麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「んー....悩みというか、何と言うか....あのー、リード。お願いがあるんだけど....」
モモネリアは、おずおずとリードの顔を覗き込む。
「ん?なんだ?」
愛しい番のおねだりの予感に胸を弾ませる様子で、キラキラ輝く視線を向けるリードネスト。
「....うぅ~。....あの、ね。言いにくいんだけど....ね。しばらく....会いにこないでほしい、の.....。ごめんなさい」
「ひゅっ......」
言いにくかったが、なんとか言い切ったモモネリアの言葉の後、すぐにそんな声にもならない音が聞こえる。
申し訳なさから、言い切ったあときゅっと目を固く閉じたモモネリアが、何も反応がないリードネストをゆっくり片目を開けながら見遣った時ーーーーー。
リードネストは、凍りついていた。
文字通り顔を青ざめさせて、口は開いたまま。
カチカチに身体を強張らせて、ピクリとも動かない。
漫画なら、『ガーン』とでも効果音が聞こえてきそうな状況だ。
....あ。間違えた、かも?
そう思った時にはもう遅く、リードネストは意識が飛んでいるような表情だ。
「....リード?」
リードネストの目の前で手の平をひらひらさせてみる。ハッと我は返り、ぎぎぎっと口を開きかけたリードネストだったが、迷っているのか開いたり閉じたり、なかなか言葉にならない。
「....わかった」
「....え?」
それだけ?と思った瞬間には、リードネストは踵を返して邸の方に向かっていた。
ガゼボから数メートル離れたところで、一度こちらを振り返り、また口を少し開きかけ何か言いたげな、悲しげな表情でモモネリアを見てから、結局何も言わずに行ってしまった。
リードネストの背中が見えなくなって、遠くからパタン、と静かに閉まる邸のドアの音が聞こえてもしばらく視線を動かせないモモネリア。
....あ、れ?もしかして、何か....誤解、された?
リードネストが居なくなった庭を見つめながら、頭の中がぐるぐる忙しない。もしかしなくても、言い方を間違えた気がする。
リードネストを拒絶したと思われたのでは?とサァーッと血の気が引いた。でも、こうでもしないとリードネストにプレゼントするものを作る時間がないのだ。
....やっぱり誤解、させたわよね。今から行って誤解を解いてくる?....でも....なんて言えばいいの?もしかしたらリードは怒ってしまったかも....。
よく考えたら、あんなに優しいリードネストがそんなことで怒るはずもないことはわかるのに、モモネリアは初めてリードネストとすれ違ってしまった事実に、怖気付いてしまった。
.......プレゼントを渡す時に、誤解させたことも謝れば大丈夫、よね?
モモネリアはすぐに思い直して、早速リードネストへのプレゼントを作り始めるため自室へと戻った。